8月に配信された2作目『大日本帝国』につづき、1983年に公開された3作目も初無料配信。
大作ながらコンセプトが明快で、大味に感じさせない戦争映画。あまり語られないことが意外なほど完成度は高い。
東宝で円谷英二特技監督の映画最終作となった『日本海大海戦』やNHKが長編ドラマ化した『坂の上の雲』と同じ戦場を舞台に、『二百三高地』のスタッフが結集。1980年代の日本映画としては珍しい大作戦争映画として完成した。
古き良き東宝戦争映画と違って、東映らしく予算をそそぐ部分をしぼっているところが特徴。日本とロシアの艦隊を俯瞰するのではなく、旗艦の三笠をピックアップして、必要最小限のセットや人間関係を作りこむ。
そのためミニチュアも三笠の他は、少ないロシア艦が映るだけだったりするが、全景を見せるために小さなミニチュアでなくて良いためか、特撮のスケール感は悪くない。冒頭のドッグで三笠を改修する場面など、実物大セットで軍艦の巨大さを印象づける場面も多い。砲撃戦のディテールも細かく、時代を考慮して観れば充分に楽しめるだろう。
ドラマとしても華々しい伝説を残す将校でも、末端で奮闘する水兵でもなく、軍楽隊を中心にしている。戦闘を専門としない、音楽で鼓舞する部署だからこそ、戦争との距離感に葛藤が生まれる。
他に水兵仲間に高利貸ししている砲員長の佐藤浩市や、戦争に行くからと手切れ金をわたされた三原順子など、味わいぶかい脇役が多い*1。
そして日本軍の圧勝として終わったバルチック艦隊との戦いを、楽器のかわりに武器を持たされた軍楽隊の視点から、悲惨な戦場として描いていく。戦争そのものの勝敗は異なるが、後の東映戦争映画『男たちの大和/YAMATO』に似たテイストで、激しい砲撃戦で命を散らす末端の兵士によりそっている。
*1:三原順子が八紘一宇を肯定するような保守政治家になった今から見ると、配役からして皮肉だ。「八紘一宇」とは何か? 三原じゅん子議員が発言した言葉はGHQが禁止していた