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戦前日本を少し擁護しつつ、戦争で狂っていく末路まで描く大長編群像劇『大日本帝国』(03:00:42)配信期間:2017年8月17日~2017年9月16日

日露戦争を題材にして大ヒットした『二百三高地』のスタッフが、東条英機と末端兵士に焦点をあてて作った太平洋戦争史。記憶では初めての無料配信。

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東映で制作され1982年に公開されたカラー映画。円谷英二特技監督が亡くなり、東宝特技監督中野昭慶に交代された時期、その中野昭慶を特撮監督として招いている。

東南アジアへ戦線を広げて後退するまでの第一部「シンガポールへの道」と、ひたすら米軍に押されて敗戦後の戦犯裁判まで描く第二部「愛は波濤をこえて」にわかれている。1980年代には珍しく、画面が暗転する休憩場面がある。

 

大作映画といっても東映作品なので、資料映像を多用して、必要な場面にのみ力をそそいで節約したつくり。

それなりに特撮を使った戦闘シーンは真珠湾攻撃くらいで、ミッドウェイや原爆投下といった日本軍が敗北するシーンは資料映像ですまされる。GYAO!のレビューで批判されているように、いくら動かせる戦車に限界があるからといって敵味方が同機種を使うビジュアルは無理もある。

もっとも、円谷死後に少しずつ縮小した東宝特撮が無理して大作感を出していたことに比べて、必要最小限の場面で効果的に特撮を利用しているという評価もできる。特に、冒頭の雨中における空母着艦訓練は、かなり珍しいシチュエーションでクオリティも高く、暗闇に浮かぶ誘導灯が美しい。

また、地上戦は敵味方にそれなりのエキストラを動員してがんばっている。海外ロケを活用した進軍はリアリティがあり、爆発の規模もかなり大きくて、現在から見ても再現映像として充分だ。

何度も映像化されたような有名な戦場は省略して、これまで撮影されていないような戦場を新規撮影しようという意図も感じられる。省略されている部分も、敵味方の損害を名簿で表示する演出などは、日本軍の項目に書かれた「ナシ」が意味を変える展開に感心した。

 

物語は、開戦した理由として当時の日本の建前を全面的に採用していることと、東条英機の美化がすぎるところは批判されてしかるべきだろう。

特に日本を追いつめたというABCD包囲網は、日本が先に攻めこんだ中国を包囲の輪に加えていることからしておかしいし、アメリカはさまざまな禁輸措置をちらつかせつつも開戦するまで日本への輸出を続けていた。

ハルノートを最後通告として解釈しているところも、よくよく考えれば違和感ある。日本軍はアジア解放のためという大義で戦っていたのだから、中国を解放しろという通告に反発して権益として支配しつづけたがることは、矛盾というしかない。

登場人物が主張するだけなら、当時の日本ではそう考えられていたという描写になるが、ナレーションで語られると映画そのものの主張と解釈するしかない。

 

とはいえ、大日本帝国のすべてを美化しているかというと、そういうわけでもない。

第一部から、植民地を支配していた欧米列強だけでなく、現地人のゲリラとも日本軍が戦い、少しずつ悩みを深めていく男が登場する。民間人を犠牲にする日本軍の問題も批判されるようになっていく。

第二部になると、現地人の協力者を口封じで日本軍が虐殺する展開も出てくる。もちろん戦後の戦犯裁判で問題視されるわけだが、虐殺を実行した副官が裁判をインチキと批判する描写がふるっている。上官と副官は自分にこそ責任があるとかばいあうが、普通に考えて両方に責任があるというしかない。裁判官に一蹴されるのも当然だ。

戦犯として処刑された上官の「天皇陛下、先に参ります」という遺言も、こっそり脚本家が天皇批判をこめたものだという。ヒットを見こんだ大作映画としては正面から当時の日本を批判できなかったのだろうが、その制約を理解すれば、それなりに悪くない作品といえるかもしれない。