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フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

石ノ森章太郎+東映スタッフによるVシネマ+女性ヒーロー『009ノ1 THE END OF THE BEGINNING』(01:24:09)配信期間:2019年6月11日~7月1日

最近に原作に忠実なTVアニメ版も無料配信された『009ノ1』の、実写映画版が初無料配信。Vシネマらしいエログロが多いのでR15で要ログイン。

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北米の特撮番組で腕をふるい、帰国後はスーパー戦隊ウルトラマンニュージェネレーションを手がけてきた坂本太郎監督による、女性スパイアクション。

東西冷戦の時代につくられた原作を近未来SFに改変するため、日本が東西にわかれて争っている架空の世界を舞台としている。

坂本監督らしい女性のフェティッシュな描写が多く、アクションも東映ヒーロー特撮のスタッフワークで手がたく楽しめる。

女性陣は乳首を見せたり濡れ場を演じたりレズビアン・プレイをしたりと体を張っているし、男性陣も世界観にあわせてデフォルメされた怪演*1で楽しませてくれる。

 

しかしVFXは安っぽいし物語は凡庸。長谷川圭一脚本らしく、あまりに設定を工夫せず物語化したためか、その安っぽさと現実味のなさが全編にあふれてしまっている。

基礎となる社会のありようや勢力争いがフワッフワしているから、どんでん返しがあっても小さな個人間の因縁にしか見えないし、結末でヒロインが社会への対峙の仕方を選んでも後日談を見たいと思えない。

社会風刺を読みこめるほどにしろとはいわないが、もう少しくらい911や311後の日本を反映した苦い味付けをしてもバチは当たらなかったのじゃなかろうか。

良くも悪くも、一時間半にも満たない時間つぶしの娯楽として向きあうのが良いだろう。

*1:竹中直人は、もはや普通の演技をひさしく見ていない気もするが。

個性的な客のひとりとして細菌兵器の感染者を乗せて、美しい列車がヨーロッパを横断する『カサンドラ・クロス』(02:08:38)配信期間:019年5月23日〜年6月22日

 1976年のイギリスとイタリアの合作サスペンス映画。ソフィア・ローレンが作家を主演して、元夫の高名な医師と協力し、解決への努力をつづける。

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イギリス映画らしい淡々と抑制されたサスペンスがつづくなか、ふいにイタリア映画らしいショッキングな情景が展開される。

 

全てを秘密裏に収拾しようとする超大国の思惑という外枠と、感染が疑われる一般客がどのように個人としての尊厳を守るかという内枠。

疾走をつづける列車を主軸として、同時進行するドラマは動きを止めず、刺激的な場面こそ少なくても中だるみしない。主な舞台が限定されているおかげで、登場人物がいりみだれても物語を追いやすい。

大国の思惑で動く軍人も、幼稚な犯罪者も、善悪の両面がある。特に、軍人の陰謀が直接的に手を下す方法とは違って、一種の確率的に期待するだけというあたりにリアリズムがある。

理想を目指して一定の成果をはたしつつ苦味を感じさせる結末も大人な雰囲気だ。全てを闇に葬ろうとする側もしょせんは権力の駒でしかないし、しかし生き残った個人が真実を広められる可能性も残されている。語りすぎない結末が味わい深い。

 

現在から見るとテンポはゆるく、アクション描写も牧歌的だが、当時の美しいヨーロッパの風景を切りとった映像は、現在では新たな価値がある。

ほとんどBGMを鳴らさず、実景の空撮と実物大のセットを活用した映像は、今見てもあまり古びていない。

さすがに終盤に合成が明らかな場面もあるが、つづけてスタントマンが命がけのアクションをおこなったり、ミニチュア特撮も巨大かつ精密な作りで、これはこれで時代を感じさせて楽しい。

 

見おろす犯罪者vsまなざす警察官『監視者たち』(01:59:13)配信期間:2019年5月15日〜6月14日

2009年の香港映画『天使の眼、野獣の街』をリメイクした2013年の韓国映画。初無料配信を約1ヶ月。
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警察の監視班に配属された完全記憶能力をもつ新人女性と、高所から観察して現場に的確な指示を与える犯罪組織の指揮者。

 まだまだ未熟な主人公の言動で息抜きし、隙のない犯罪者の暴力で緊張感をもりあげる。

 

監視カメラを駆使した最新技術と足を使った尾行術、主人公の特殊能力を組みあわせ、見せ場たっぷりの洒脱なサスペンスとして完成した。

現代韓国映画らしくカーチェイスも肉弾戦も標準以上。都市のさまざまな空間を撮影現場として使って、画面にまったく安さを感じさせない。群衆から監視対象を見つけるまでの流れるようなカメラワークと、迫真のアクションで手ぶれさせるカメラワークとの切りかえも見事。

序盤の自動車炎上の遠景だけやや合成っぽさが出ていると思ったが、他のVFXはハリウッド映画などと比べて遜色ない。

 

ひとりだけ高所から指示を出す犯罪者リーダーは、本人にミスはないのに現場とのコミュニケーション不足から追いつめられていく。

同じ目線の高さから協力する監視班は、法律で行動をしばられ、現場で傷つきながらも、真犯人に肉迫していく。

素っ気ないタイトルだが、本編を見た後では味わいが変わって感じられる。基本は普通のエンタメだが、それ以上の深味もある作品だ。