済州島の虐殺事件を題材とした2012年の韓国映画。何度目かの字幕のみの無料配信。
1948年、米国とソ連の影響下で南北に分断された朝鮮半島。そこで済州島の海岸5kmにいる住民をすべて虐殺するようにと、米軍政下の韓国軍に命令がくだった。住民たちは山に逃げ、洞窟に隠れ住む。軍人たちは凍える雪のなかで「アカ」を殺していく……
サンダンス映画祭で審査員賞を受けた、インディペンデント作品。低予算を逆手にとって、あたかも1940年代のようなモノクロ映像とカメラワークの作品にしあげている。
固定カメラで長回しを多用して、まるで黒澤明を意識しているかのよう。説明台詞の微妙な多さも古い映画らしさを感じさせる。
それもただ古めかしくしているだけでなく、住民たちはみっちり画面いっぱいに寄せて、さらに周囲を岩や草木で覆って、閉塞感を表現。軍人たちは刑罰で雪中を全裸にさせたり、広い野原を延々と走らせたり、虐殺にとどまらない非人道性を描いている。
もちろん銃撃戦などは現代韓国映画らしく低予算なりに緊張感や迫力があって、虐殺シーンの手持ちカメラ演出なども見どころある。
まだ状況を理解していない男たちのノンキな会話で息抜きしたり、悲惨なだけではないメリハリある話運びも見やすい。
モノクロで俳優の顔立ちが区別しづらいうえに外国人名がいりみだれるため、登場人物の区別がつけづらい問題は感じた。
しかし、反共産主義を目的とした自民党と統一教会の長く深い関係が安倍晋三元首相の暗殺事件にいきついた今だからこそ、参照するべき歴史といえるだろう。
きっと視聴して損はないと思う。