アカデミー賞で3部門を受賞した2014年のアメリカ映画が、吹替版と字幕版を初無料配信。デイミアン・チャゼル監督は続く『ラ・ラ・ランド』でも絶賛された。
パワハラとセクハラに満ちた指導者と、それ以外に音楽の道はないと思いこんだ若者が、あらゆる選択肢を犠牲にして、ひとつのセッションにたどりつくまでを描く。
「音楽を楽しめ」という台詞がくりかえされるが、この物語における音楽は楽しめるものではない。
バンドメンバーに完璧を求める指導者は、立派な音楽家を育てようとしつつ、気にいらないメンバーは部品のように次々にとりかえていく。
しかも終盤には、音楽を純粋に求道することすらなくなって、相手を傷つけるための道具に堕してしまう。
ようやく最後にたどりついたセッションも、誰かを楽しませるためのものではないし、指導者と若者がコミュニケーションを回復することもない。
若者が失敗する時は観客の顔がはっきり映しだされるのに、若者が再起した時は観客がはっきり映らない。
ある種のグルメ漫画が、料理で人々を楽しませるという目的から、対決で勝利することだけが目的へと変化していくことを連想させる。
それと同じように、題材そのものの素晴らしさではなく、そこにとらわれた人々が戦う物語として、印象深い作品ではあった。