2005年のイギリス・南アフリカ・イタリア合作映画。1994年のルワンダにおける大虐殺から少人数を救ったヒーローの実話にもとづく。
かつて植民地時代にベルギーが勝手に線引きした、ツチとフツというふたつの集団。支配しやすくために、階級ごとに民族のちがいをつくりだしたのだ。
当然のようにツチとフツはたがいに反目し、ベルギーの支配を脱した後も衝突はつづいた。それでも混乱と虐殺の後、ひとときの平和がつづいた1994年、フツ側の大統領が暗殺された。
それをツチによる暗殺と軍部が主張し、フツへの虐殺がはじまった……
くわしい情報は、日本国内での上映を目指したプロジェクトのブログがくわしい。
『ホテル・ルワンダ』のロビー - livedoor Blog(ブログ)
基本的には低予算な作品だが、南アフリカでロケした風景は充分に異国情緒をそそる。
戦闘や虐殺の情景は数少ないが、ホテル支配人の主人公のかぎられた視野で映しだされることで、必要充分な予算を場面ごとに投入できる。主人公が霧の道を走っていた時、川に落ちたと気づく場面は印象的だ。
とにかく家族を守ろうとしていた主人公は視野を広げ、少しずつ守るべき範囲をホテル全体へと広げていく。その苦しい状況に強要されたヒーローの誕生が、気高くも痛々しい。
最後に主人公が救われる場面も、ひとつの暴力が別の暴力で止められるという、葛藤を感じる展開だ。爽快感だけではなく、実話をもとにしただけの重みをちゃんと観客へ伝えようとしている。そしてその重みを受けとめたいと思わせるだけの、良い映画だった。
音をつかった演出もすばらしい。ラジオをとおしてくりかえされる、フツへの虐殺扇動プロパガンダ。顔の見えない声だからこそ、恐怖をもりあげる。
メインテーマも印象的だ。救われたと錯覚している子供たちを、降りしきる涙が襲う。そして最後に明かされる、歌詞の意味。