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すべてがスケールアップした大人の探偵ゴッコ『探偵なふたり:リターンズ』(01:56:26)配信期間:2023年2月1日~2月28日

2015年の1作目*1につづく2018年の韓国映画。字幕のみの無料配信が4週間。

gyao.yahoo.co.jp

青年はマンガ喫茶を言葉たくみに売り飛ばし、ベテラン刑事とコンビを組んで探偵事務所をひらく。しかし仕事の依頼はまったく来ない。

しかし買い物にいった夫が列車に轢殺されたという女性の依頼を受けて、孤児だった死者の周辺を調べると、不審な死者が複数いることがわかって……

 

気軽な雰囲気でつくられた探偵映画。探偵のどちらも勝手な行動に出たため妻に愛想をつかされたり、マンガ喫茶をめぐる意外な逆転があったり、ユーモアにまぶしながらも事件は陰惨。

謎の男の追跡劇などで韓国映画らしいカーチェイスなどの追跡劇をそつなくこなし、敵との戦いでも動きの良いアクションを展開する。

 

そして物語は巨大で裕福な児童養護施設をめぐる謎に近づいていく。

事務所に依頼がもちこまれた時点では、事故死した夫は孤児で身寄りがないという設定から、「結婚詐欺師」という可能性を考えた。依頼者が確認する以前に施設長が身元確認して埋葬されたことで、「死体は別人」とも視聴しながら思った。

しかし探偵ふたりはそのような可能性は考えず、多くの著名人が支援する理想的な児童養護施設をそれゆえに怪しいと考えたりする。謎のメールを残した男を追跡し、名前しかわからない人物について調べていく。そして施設関係の工場という安定した職場をはなれた元孤児たちが不審死していることから、関係者による「生命保険詐取」という犯罪をあばく……

……しかし物語はそれだけでは終わらず、そこまで物語では無視されていた発端の「身元確認」に注目し、「死体は別人」という事実から予想外のスケールの犯罪を明らかにしていく。そこまで描かれてきた細かい説明が伏線として効果をあげ、その犯罪をする動機も、可能な手段も観客の前に示されている。

探偵コンビに協力を求められる新登場の元サイバー捜査官も楽しいキャラクターだ。描かれたのは悲惨な事件でありながら救いもあり、結末もスッキリと終わる。エンターテイメントとしてよくできた作品だ。

 

ちなみに孤児に豊かな生活をさせることができた背景は、映画公開の直前に日本で連載されてTVアニメ化もされた漫画『彼方のアストラ』と似ている。映画の制作期間などから考えて、それぞれ完全に独立して思いついた設定だろう。

一方を先に知っていると意外性を感じづらいかもしれないが、漫画はSF設定にすることで主人公たちの特殊な立場の説明として、映画は現代社会で成立させるための映像的なスケールがきちんと表現されていて、どちらも完成度が高い。