ビリー・ムーアの自伝小説を2018年に映画化。囚人のレイプなどがあるためか要ログインのR15で、字幕のみの無料配信を2週間。
家族からはなれてタイの地でヘロイン中毒のボクサーになっていたビリーは、ある日のこと、警察にふみこまれて暴力的に逮捕される。
ビリーは劣悪な環境の刑務所のなかで、刑務官にヘロインをわたされて利用されたり、賭博でタバコを賭けながら、やがて刑務所内のムエタイに参加することに……
実話をもとにした映画ということで、どこまでもリアリティを重視し、説明的なセリフはつかわず状況を克明に映していく。BGMも環境音のように静かだ。
実際にビリーが収監されていた刑務所での撮影は断念したものの、タイで撮影の1年前まで使用されていたナコーンパトム刑務所で映画を制作。実際の囚人も多数エキストラに起用され、囚人チャンピオンも俳優として登場。
刑務所では少なくない囚人が皮膚全体に入れ墨をして、「レディボーイ」と呼ばれるトランスセクシャルも収監されている。
実録映画としての面白味はあったし、評論家筋の評価は高かったが、物語らしい物語はない。
先進国から見て、あまりに異文化の異国の地における刑務所生活は、悲惨でありつつどこか白昼夢めいている。
主人公は実際には望めば家族に助けてもらえる余裕があるし、白人男性がアジアで物見遊山する火遊びのようでもある。
描かれる問題をつくりだしている社会への批判的な視点もなく、いわゆるダークツーリズムの長所と短所をそのまま映画にしたような作品だった。