実話にもとづくという2018年の韓国映画。日本では2020年に劇場公開された。字幕と吹替で初無料配信が一ヶ月。
麻薬捜査をする刑事に、誰かにたのまれて死体をはこんだと告白した男が逮捕される。男自身が恋人を殺して死体を遺棄したらしい。
しかし男は裁判で有罪になった後、刑事にだけ他にも7人殺しているとうちあける。刑事は殺人課に移り、男の告白にしたがって捜査をはじめるが死体が見つからない……
キム・テギュン監督はこれが初長編映画。製作総指揮で共同脚本のクァク・キョンテクは『タイフーン』等でゼロ年代から活躍するベテラン。
映画としては連続殺人をあつかいながら、韓国映画にしては地味で、陰惨な場面が少ない。死体を掘り起こす場面は大規模だが、日本の刑事ドラマでも予算がつけば可能だろう。
しかし虚実がはっきりしない男の言葉にふりまわされながら、じりじりと事実に肉薄していく刑事のドラマとして緊張感がつづく。
兄弟から借りた金を男に贈って告白をひきだす刑事を見ると、ただ刑事にたかるため存在しない事件を語っているのかもしれない。警察に勇み足をさせて確定した判決をとりけさせるつもりかもしれない。あるいは『殺人の告白』のような真相なのかもしれないとも思わせる。
事件の真相がわからないだけでなく刑事自身の立場まで危機にさらされていく。それでも男の言葉から嘘の法則を見いだし、物証を見つけようとする刑事の根気づよさが渋い。
映画はひとつの結末にたどりつくが、実話にもとづいていることもあり、不確定なところが残りつづける。
それが現実の不安感として観客に残り、それでも真実をつかもうと歩みつづける大切さを実感させる。