破天荒な演出家人生を送った五社英雄監督による、1987年の東映映画。売春をテーマにしてセックスシーンや半裸も多く映されるが、R15ではない。
テレビドラマ出身で迫真の殺陣演出で知られた五社監督が、この作品では女優に体当たりの演技をさせる。
娼婦の技術をてほどきするためレズビアン的なシーンもあれば、無理心中の大立ち回りもある。
けして奇をてらった演出ではなく、状況をわかりやすく伝えることに徹したカメラワークが、俳優の演技を劣化させず映し出す。さまざまに狂っていく娼婦の描写も、上滑りにならないギリギリで迫力ある。
そうした人間ドラマを支える舞台として、3階建てを超える遊郭や、河岸の貧しい長屋まで作りこんだ撮影セットもすごい。さすがにカメラワークの制限から、どこからどこまで作ったかがバレてしまっているものの、日本映画としては立派な大作だろう。
ひとりの女性が身売りされ、やがて花魁の頂点に達するまでを主軸に、さまざまな娼婦と客の人間模様を描いていく。
嘘いつわりに満ちたエピソードひとつひとつは娼婦を題材とした物語の類型が多いが、群像劇的に次々に場面が転換していくので、見ていて飽きない。
ただ、他の娼婦のドラマに尺をとられて、狂言回し的なヒロインが吉原の思想を内面化していく変化についていけないところはあったが、そこはテロップで説明された時間経過で観客の側が想像してやるべきだろうか。