押切蓮介のホラー漫画を原作とした2017年の日本映画。昨年のはてなブロガー開催の漫画実写化邦画ベストテンでは12位につけた。
残酷描写が多いので要ログインのR15で、無料配信を2週間。
奥深い限界集落で、廃校目前の中学校で卒業をひかえた少年少女。ゲーセンやカラオケといった娯楽のない街で、東京からの転校生をイジメの標的にしてうさばらししていた。
しかし転校生の前にイジメられていた少女が扇動されて、イジメていた少年少女とともに転校生の家族を破滅させる事件に発展。それが集落の秩序を破壊し、雪のつもった風景が血で染まっていく……
押切蓮介初の超常現象が存在しない長編連載ホラー漫画を、「完全版」として加筆修正。それを原作にして、さらに細部をブラッシュアップした。
原作ではどんでん返しのため唐突に新たな設定を明かしたイジメ首謀者について、映画では違和感の出ないよう最初から調節。はっきりイジメている描写があった原作と違い、映画では周囲から距離をとって実際はイジメに加担しない態度をつらぬいている。
ほぼ全員悪人という印象の物語で、やや浮いていたイジメ首謀者とイジメ被害者の少女同士の関係を、抒情性たっぷりに演出。少年少女が傷つけあう残酷な物語のなかで、数少ない希望として印象づけた。
もうひとりのイジメ被害者とあわせて、レズビアニズム映画という観点からも見ごたえがある。
また、原作の絵柄はかなり特徴的だが、映画は雰囲気を抽出しつつ、単体の映像作品として見られる作品にしあげている。
しっかりロケハンした限界集落にはリアリティがあり、ゴミ捨て場などの美術もしっかり飾りこみ。イジメ関係のVFXや特殊メイクも日本映画としては健闘していて、見ていて気になるほどの粗はない。
真っ白な雪におおわれた街は静謐な美しさがあり、少年少女の服装の赤や黒を浮かびあがらせ、残酷な事件とのコントラストを作りだす。コーエン兄弟の映画『ファーゴ』を思い出した。
ただ、長編漫画の展開を2時間以内に圧縮したためか、倒されて近くにあったものをつかんで反撃するというシチュエーションがくりかえされるのは、やや物語の都合を感じた。
しかしこれも、主観視点いわゆるPOVをボウガンの場面で使う演出を見ると、印象が少し変わる。
照準が標的をとらえられずに空を切る様子を中盤で表現。
照準が標的をとらえる力強さを終盤で表現。
ちょっと目を引く演出を、奇をてらっただけで満足せず、リフレインすることで差異を強調してみせたわけだ。