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各国の名監督が格差社会を題材にする潮流のはじまり『わたしは、ダニエル・ブレイク』(01:40:05)配信期間:2020年2月3日~3月2日

巨匠ケン・ローチ監督による、2016年のイギリス映画。カンヌ映画祭の最高賞を受けた傑作を、一ヶ月の初無料配信。

gyao.yahoo.co.jp

心臓病をわずらい、主治医から仕事を止められている大工のダニエル。

しかし国から委託された査定業者は労働可能と判断し、ダニエルは職探しのための支援しか受けられない。

腕利きの大工だがデジタル技術にはついていけず、苦労して無意味な履歴書をつくっては、働けるはずもない職探しを形式的につづける……

 

無意味な手続きで市民を福祉から遠ざける国家。そんな不条理を淡々と描く。

BGMはほとんどなく、奇をてらったカメラワークもない。場面が終わるごとに余韻を断ち切るように映像がブラックアウト。観客の感情を派手な演出でもりあげることを徹底的にさけて、選択肢と視野がせばめられていく人々の苦しみによりそう。

ロンドンから引っ越してきたシングルマザーの隣人を助けながら、ダニエルは力不足を痛感し、尊厳が削りとられていく。個人の優しさが手をさしのべる瞬間もあるが、お役所仕事の不条理をはねのけることはできない。

それでもダニエルは苦しみをかかえながら、ふりしぼるように声をあげる。「わたしは、ダニエル・ブレイク」と。記号ではなく、ひとりの人間だと……

 

万引き家族』『ジョーカー』『パラサイト 半地下の家族』といった、競作するかのような動きの初期につくられた傑作として、味わい深い。

後の作品群がフィクショナルな設定を活用していたことに対して、どこまでも現実の今ある苦しみによりそったことが逆に個性的。

フードバンクなどのイギリス特有の制度もていねいに描写され、ドキュメンタリーを見るような興味深さもあった。