1991年のイヒョンホ誘拐事件をモデルにした、2007年の韓国映画。今年初めに初無料配信されたが、今回の無料配信は約十日間。
人物や舞台の設定は現実から変更。
政界進出も考えている人気キャスターを主人公にして、他の残虐な事件は淡々と報じていた男が、有名人ゆえに身動きがとれず、妻ともコミュニケーションがうまくいかないまま、犯人に翻弄されていく。
誘拐犯は何度も電話をかけてくるが交渉も捜査も進まず、一進一退が1日1日くりかえされる。映画は重苦しさを増していき、愚かに描かれていた夫婦の苦しみに共感できるようになっていく。
2007年の時点で韓国映画らしく重苦しいスリラー演出は完成されているし、自動車を利用したちょっとしたアクションもある。
自動車が活用されるのは、携帯電話やスマホがなく、自動車電話くらいしか移動できる電話機がない時代ゆえの描写でもある。
いくら1991年の盧泰愚時代とはいえ、警察があまりにも無能すぎないかと首をかしげる部分も多いが、わかりやすい美女ではない肥満体の婦警が活躍するような部分は珍しくて面白い。
ちなみに実際の事件は韓国では有名で、ちょうど映画公開直前に「時効となって」話題になったので、たぶん本国では展開で驚かせるサスペンスではない。
しかし情報を持たない日本の観客なら、謎めいた展開がどのような結末をむかえるかを、ミステリのように興味深く見ることができるだろう。
そしてタイトルの本当の意味が明かされる結末で、観客は映画をスクリーンの向こうの虚構ではなく、現実に起きた事件があるのだと実感するだろう。
映画の力を信じている韓国らしい作品であることは間違いない。