『マーターズ』のパスカル・ロジェ監督が脚本も担当した、奇妙な味のホラー映画。初の無料配信が一ヶ月。
さびれていく炭鉱町で、子供たちを優しく育てる看護師のジェニー。しかしある日、謎の存在がジェニーの手元から子供たちを連れ去っていく……
これはジャンルの説明が難しい。正確に説明しようとすると、どうしてもネタバレになってしまうためだ。
都市伝説めいた超自然ホラーのようであり、殺人鬼の徘徊するスラッシャーホラーのようであり、主人公が幻覚を見るサイコサスペンスのようでもある。
話運びは淡々としていて、舞台となる街のうらぶれた感じもあって、文芸映画のようでもある。
しかし謎めいた雰囲気がありつつも、自動車を使った派手なアクションもあるし、「トールマン」との追跡劇はけっこう怖くて、ちゃんと観客を楽しませるエンタメを忘れていない。
そしてこの種のホラーには珍しく、しっかり伏線をひいた逆転劇から、ていねいな結末へ落としこんでいく。謎が解かれた時の驚きはなかなかのものだ。映像作品として「叙述トリック」をきちんと見せている。
あえて似た作品にたとえるなら、「ハーメルンの笛吹き男」だろうか。主人公の立場がぐるりと逆転して、いったんホラーとしての結末が見えたかと思わせてから、誰が正しいのかという疑問を長いエピローグで問いかける。