ブラッド・ピット主演で話題となった2014年の戦争映画が、吹替と字幕の両方で初無料配信。
gyao.yahoo.co.jp製作・監督・脚本をつとめたのは、脚本家出身のデヴィッド・エアー。
ちなみに同じ2014年にシュワルツェネッガー主演のアクションサスペンス『サボタージュ』も監督し、5月13日まで無料配信中。
特に戦争映画として斬新な展開があるわけではなく、良くも悪くも教科書通り。一両の戦車を主軸とすることで視点がさだまり、大作戦争映画にありがちな散漫さがない。
主力の戦闘を助ける別動隊として、比較的に小規模な戦いがつづく戦車フューリー号だが、充分に戦闘と日常の見せ場をちりばめて、ひとつの娯楽作品としてまとまっていた。
ブラッド・ピット主演らしく泥臭さのない戦争映画になるかと思いきや、フューリー号内で油まみれになりながら修理する場面に始まり、戦車内で排泄する戦場の過酷さや、ただの肉塊となりはてた友軍兵士の姿が画面に大写しにされていく。
連合軍を美化したりもしない。占領地の解放ではなく、ドイツまで進攻した部隊なので、現地から歓迎されたりもしないし、主人公と周囲も悲惨な戦場に倫理観をむしばまれ、捕虜を裁判せず処刑したり、新兵が女を抱くよう無理強いしたりする。
敵も味方もただ正面から火力をぶつけあうのではなく、遮蔽物に隠れて戦おうとする描写をていねいにくりかえす。砲弾の種類も、きちんと状況ごとに使いわける。
ちゃんと当時の建物をオープンセットで作って爆破するし、ドイツ軍の少数精鋭戦車ティーガーとの戦いは緊迫感ある。
最後の戦いも、一見すると勝算がないのにいきなり自己犠牲にはしったようでいて、よくシチュエーションを考えると理解できなくはない。敵地奥深くまで進攻した段階で孤立したからこそ、単純に逃げることはできなかったと思えば納得できる。
ただひとつリアリティを壊している大きな難点として、曳光弾の表現だけが、奇妙に安っぽくていただけない。
あまりにカラフルかつクッキリして合成ということがあからさまで、まるで『スターウォーズ』を見ているかのようだ、
実際、この曳光弾のアンリアルさは観客の不評を買ったようだ。ただ低予算で安っぽくなったのではなく、わざわざ手間をかけて安っぽくしているスタッフの判断が理解できない。
もしディレクターズカットが作られるなら、曳光弾を合成していない映像素材を使ってほしいと思うほど違和感がひどかった。