点数稼ぎのため犯罪を放流していた北海道警の、中心人物の手記にもとづく2016年の映画。
今年1月*1につづいて、またも短期間ながら無料配信。女を抱くシーンなどがあるためかR15でログイン必須。
映画の規模感はVシネマに毛が生えたくらいだが、できる範囲で工夫して*2、1970年代から2000年代にわたる稲葉事件をテンポ良く見せていく。
狭い路地のカーチェイスや、ヤクザとの緊張感ある対峙なども、おそらく低予算だろうにがんばっている。
北海道が舞台になっているのも良かったのだろう。
長崎市長や警察庁長官への銃撃という歴史的な事件を、あくまで新聞やTVで知る遠い出来事としてすませらた。
それでいてそれらは年代の説明描写に終わらず、銃刀法違反の検挙が重視される背景として位置づけられている。
主人公の熱血警官を演じるのは、綾野剛。
酒を飲まずに煙草でむせるような若者が、警察の柔道大会で勝つために警官となり、犯罪者に近づくために同化していく。
いつしか煙草を好んで吸うようになり、かつて柔道チャンピオンだった体力は衰えていく。
潜入のためにスパイをつくって仲良くなっていく描写も、ヤクザ映画やマフィア映画のパターンとしてよくできている。
北海道警ぐるみでチンピラが祝福される局面まである。そこまで上昇したからこそ破滅した時の落差も大きい。
同時に、そうした友情や仲間意識を映画は全肯定はしない。しょせん主人公は便利に使われてるだけのトカゲの尻尾で、主人公もまた周囲を無自覚に利用していただけだということが、映画を最後まで見れば痛感するしかない。
もちろん警官の正義も映画は懐疑しており、描写される日の丸と君が代が皮肉きわまりない。
そうした若者が破滅していく悪夢を、静かに変化するサスペンスとしてではなく、あくまでコメディとしてテンポ良く見せていったのもいい。
おかげで2時間を超える時間が沈鬱になりすぎず、エンターテイメントとして飽きさせない。
*1:悪に対処するため悪と同化していった熱血警官の顛末『日本で一番悪い奴ら』(02:14:38)配信期間:2018年1月11日~2018年2月7日 - フリームービーメモ@はてな
*2:主人公が警官になった当初は署内が煙草で白く煙っていて、時代が進むにつれて空気が綺麗になっていくところがわかりやすい。