園子温監督脚本によるオリジナル現代ファンタジー映画が初無料配信。『シン・ゴジラ』の1年前に長谷川博己が主演した怪獣映画という側面からも楽しめる。
ファンタジックな設定で、せちがらい社会を寓話化。
方向性は『世にも奇妙な物語』の拡大版といったところ。映画ではティム・バートン監督作品に近い。
ロックシンガーに挫折した主人公がTV番組に嘲笑される妄想を見ていたかと思えば、捨てられた玩具が謎の老人の力で意思をもって動いたりする。
ネガティブとポジティブが交錯し、主人公は奇跡的に成功の階段をかけのぼりながら、どこか大切なものを置きざりにしてしまう。
主人公が劇中でヒットを飛ばす歌は園監督が作詞作曲。あくまで奇跡の力の結果とはいえ、劇中歌としては悪くないクオリティ。かんちがいで深読みされそうな内容として成立している。
低予算映画らしいが、よく見ると少ないセットをうまく利用して、ちゃんと見られる映像にしあがっている。
地下空間の美術設定もこっているし、動く玩具たちも吊り糸こそ見えるが雰囲気にはあっている。ライブの観客も大勢いるように見せられていて安っぽくない。
何より、近年に『ウルトラマンX』等で活躍している田口清隆特技監督の仕事が素晴らしい。古典的なミニチュア特撮を現代的に発展させ、リアルな都市破壊を表現していた。10分ほどしかないが、クライマックスは怪獣映画としても必見だ。