奇妙な来訪者から始まる奇妙な事件を描く、2013年のアダム・ウィンガード監督作品。吹替版と字幕版が同時に初無料配信。R15で要ログイン。
死んだ息子の戦友だったと名乗る男が郊外の家におとずれ、優しい言葉と真摯な態度で両親や姉弟を懐柔していく。
しかし家族を救うためとはいえ暴力をふるいはじめたあたりから、少しずつ異様な雰囲気に満ちていく……
謎の客が言葉たくみに家族へとりいり、やがて支配していくという物語のジャンルがある。
安倍公房によるスリラー小説『闖入者』や、藤子不二雄Aの『魔太郎がくる!!』の1エピソードが有名だろう。
この『ザ・ゲスト』も、そんなジャンル作品のひとつといえる。
しかし前日に配信が始まった同スタッフ『サプライズ』と同じく、そのジャンルに期待される要素を存分に見せながら、やがて異常な方向へ拡大していく。
当初は乾いたアメリカ郊外で、淡々とした物語がつづくかに見える。家族にとりいることができるだけの、人情劇としての完成度も高い。
前半のいくつかのいざこざも、アメリカ文化らしい出来事にとどまり、現実感を残している。謎の男の奇行も、元軍人というプロフィールからギリギリありえそうな範囲にとどまる。
しかし中盤、いきなり田舎の風景から視点を変え、一気にアクション映画としての要素が強まる。特殊な人物の特殊な戦闘を、状況のインパクトにたよらず、きちんと知恵比べとして展開させる。
さらに終盤、アクション映画としてのテンションをたもったままホラー映画としての要素をとりもどす。騒々しい音楽を背景に、サイケデリックなビジュアルで映し出される恐怖は、ダリオ・アルジェント監督や中川信夫監督といった巨匠のホラー演出を思わせる。それでいて、ちゃんと前半までに示された伏線を活用して、世界観から乖離することがない。