タツノコプロのオリジナルアニメを実写リメイクする一環で、2013年に公開。各サイトで会員向け見放題配信はされていたが、無料配信は初。
17年前にギャラクターが東欧を侵略し、亡命者が逃げこみ軍事国家化した日本。そこにギャラクターが再侵攻をはじめる。
秘密裏に活躍するヒーローと、異星の技術で侵略する敵を、映画オリジナル設定で表裏一体な存在として位置づけた。
もともとは三池崇史監督にオファーが行っていたが、予算の関係から『ヤッターマン』の実写化が選択された。
その時点から予算や技術が充実したわけでもないのに安易に映像化したあげく、恋愛描写に力点をおいたことで公開当時に不評をかった。
『ガッチャマン』 -「これぞ科学忍法火の鳥だね!」・・・頭を空っぽにして見に行ってみるが、やっぱりあんたらただのバカ (柳下毅一郎) -[増量]5,011文字- | 柳下毅一郎の皆殺し映画通信
よく、日本映画の欠点として、なんでも恋愛を持ちこんでしまうことが指摘されるのだが、思うに、恋愛要素を持ちこむこと自体が悪いわけではない。問題は作戦遂行中に痴話喧嘩をはじめてしまうことである。これをやるといきなりアマチュアくさくなってしまう。
たしかに、当時にゴリ押しと呼ばれるほど多くの作品に出演していた剛力彩芽が、主人公へアピールを続けるところは痛々しい。原作のアニメでも主人公に恋心をもっていたキャラクターだが、映画は尺が短いため相対的に恋愛描写しか印象に残らない。
しかも映画オリジナルで主人公とライバル、そして敵女性リーダーの三角関係がメインストーリーとなっているため、さんざん描写された剛力の恋愛描写は物語と無関係なままフェードアウトする。
だいたい演技はともかくダンスが特技なのだから、ヒーローらしいアクションは可能だろうに、爆弾を止めるような技術系ヒーローに位置づけて、画面で活躍しない。適材適所のキャスティングがおこなわれていたなら、きっとゴリ押しという不評は少なくなったろう。
しかも爆弾を止める方法すらくわしく描写されず、最終的に爆弾の制御装置を物理的に破壊して止めたことが示唆される。敵も味方も頭の良さそうなキャラクターがひとりもいない。
全体を見ても、民間人ごと自分たちを攻撃したギャラクターより人類を憎んで敵に寝返るという理解困難なドラマが展開されたり*1、ガッチャマンが人類に対しても秘密裏に活動する必要性が見えなかったり、ドラマも設定も問題が多い。
ただ、日本のVFX制作会社としてはトップクラスの白組が中心となって、そこそこ見られるCG映像は提示できている。
日本の変身ヒーローという条件から見れば、都市を縦横無尽に暴れまわる前半のバトルは悪くない。比較対象となる自衛隊の活躍もなかなかだ。
白組がVFXを制作したトミカ系のTVヒーロー『魔弾戦記リュウケンドー』や『トミカヒーロー レスキューフォース』の延長と思えばいい。それぞれ第1話がバンダイチャンネルで無料配信されている。
俳優陣の体型もメタリックなスーツを着ながら破綻しておらず、短いながら動けるアクションができることはうかがえる。
きちんと予算と技術の範囲でできることを見定めて、もっと設定と脚本を煮詰めて作ったなら、ずっと見られる作品になったろう。
それでもGYAO!で配信されている海外の低予算作品に比べれば、それなりに粗が出ないようにがんばっている。ひまつぶしとしては悪くない。
……ちなみに、続編が絶望的とわかった現在にED後のオチを見ると、苦笑するしかないという問題もある。
*1:子供時代に拘束され管理されていたところをギャラクターに攻撃され、少女だけ行方不明になったという描写にするだけでいいのに。逆に、わざわざ回想のひとつを子供時代に設定する意味がよくわからない。