2009年に作られたカナダとフランスの合作映画。監督のヴィンチェンゾ・ナタリは、脚本も共同で執筆。
驚くべき低予算で高尚な雰囲気の閉鎖系ホラーを成立させた『CUBE』が代表作のナタリ監督だが、今作はマッドサイエンティストが怪物を生みだしてしまう古典的なホラーの現代版。
舞台を会社内と農場周辺に制限することで予算を抑えつつ、怪物のVFXに力を入れて、ハリウッド大作に負けない実在感あるクリーチャーを誕生させた。
ドラマとしての特色はマッドサイエンティストの設定にある。会社で働く遺伝子工学者に設定したことと、それが若い男女のカップルということ。
怪物を会社の施設で生み育て、少しずつ研究を進めていきながら会社側から隠すこと、それ自体がサスペンスとして成立している。研究を進めていきながら、怪物のバラエティある設定を見せていく展開もいい。
さらなる特色は、研究者と怪物の関係を、親と子の過保護や虐待として描いたところ。普通なら会社に指示されたルールや研究を発表できるラインを考えて怪物を育てるのは断念するはず。そうでなくても、誕生時の怪物の攻撃や醜悪な外見から、すぐ殺す判断をすべきだと誰でもわかる。しかし女性研究者は、子供を産む代わりのように、怪物を育てていく。
女性研究者が自分の母親を憎悪していることも、初期から示唆される。そして女性研究者は母親と違って愛情を注ぎこもうとしながら、世間から隠れるために同じように怪物の自由を奪っていく。そして怪物は男性研究者を愛してしまい、男性研究者も美しくなっていく怪物へ愛着をもっていくという悲劇。
ただシリアス一辺倒のSFではけしてなく、ホラーらしい恐怖演出も多いし、クライマックスのアクションはなかなかのもの。
主役のカップルをふくめて、情けない男性陣と、強気な女性陣という登場人物のコントラストもいい。
何より、インターネットの一部でネタにされている怪物とのセックスシーンも、ちゃんと笑えながら怖いものがある。