2011年に公開され、台湾で大ヒットした傑作歴史映画が無料配信。第一部だけでも反乱劇として完結している。
映画は台湾奥地に居住していた先住民族によりそい、日本の侵略に対する反抗と屈服、そして蜂起までを描きだす。霧社事件と呼ばれる抗日暴動の詳細は、公式サイトがくわしい。
合計4時間半という大長編だが、まったく中だるみすることなく、緊張と痛みのある物語が展開される。首を切断するような残酷な描写も多いのだが、美しい歌と景色にのせた流血は、いかにも先住民の儀式のように神秘的だ。
日本人役には日本人俳優を起用しており、彼らがしゃべる場面には字幕がついていないほど台詞が自然。基本的に日本人は侵略者だが、いくらか優しい人間もいるし、しかし上下関係が子供にまで徹底してすりこまれている。
一方、先住民も一枚岩ではない。日本軍が来る前は部族間で対立していたことや、占領後は日本人に同化する若者もいるという温度差がある。その分断を日本も統治に利用した。それでも主人公は雌伏をつづけ、ついに蜂起する。その力強さが印象的だ。
そして第二部になると、日本軍による本格的な反撃がはじまる。戦闘機が離陸したり、「虹の橋」をイメージしたCGは少し粗いが、雄大な自然に展開される激しいゲリラ戦は戦争映画として充実感たっぷり。蜂起の挫折や「セデック・バレ」の数奇な運命も、歴史の厚みを感じさせる。
映像も素晴らしい。雄大な山奥の風景と、ていねいに再現された当時の生活。先住民のくらす素朴な村と、日本人がつくらせた薄っぺらい街の対比。ちなみにスタジオジブリ作品や『スワロウテイル』『フラガール』で知られる種田陽平が美術デザインを手がけている。
激しい戦闘シーンも見どころ。先住民はすばらしい身体能力を見せつけつつ、ちゃんと頭をつかった作戦を展開し、ゲリラ戦で日本軍を翻弄する。銃をあつかう侵略者と、地形を活用する現地人の戦いは、西部劇の「インディアン」*1のようでもある。