ふむめも@はてな

フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

廃墟へ撮影に行った日から、謎の女がついてくるホラーに見えるが……『【短編映画】消えない』(11:57)配信開始:2021年10月31日

YOUTUBEで数十万の登録数をもつ「kouichitv」が埼玉県との企画でつくったショートムービー。台詞に埼玉が一度登場するだけで、特に観光促進などのCM性はない。

www.youtube.com

いかにも黒沢清的な、赤い女がどこでもたたずんでいる恐怖。一歩も動かずについてくる見せ方。体がゆれて実体を感じさせるのはご愛敬。もう少し遠くにたたずませたほうが恐怖感が出ると思うカットも多い。

しかし本当にたたずんでいるだけで特に目に見える危険があるわけでもなく、途中から雰囲気が弛緩してくる。のん気なBGMで意図的な演出ということがわかる。

あくまで低予算なショートホラーの粋を脱していないが、適度に気が抜けたシュールさがあって見やすい。全体のコントロール、できることの見きわめがうまいのだろう。

【再配信】日本で連続TVドラマ化もされた、警官を目指す若者コンビの奮闘劇『ミッドナイト・ランナー』(01:48:56)配信期間:2022年7月18日~8月17日

2020年のTVドラマ『未満警察』の原作にあたる、2017年の韓国映画。字幕と吹替で無料配信。

gyao.yahoo.co.jp

貧乏でも入れるため、軽い気持ちで警察学校へ入った若者ふたり。最初はそりがあわなかったが、訓練でひょんなことから仲良くなる。

ふたりは学校をぬけだしてナンパをしようとするが、うまくいかない。しかしそこで女性の誘拐を目撃したことで、深夜の追跡劇がはじまる……

 

『ディヴァイン・フューリー/使者』のキム・ジュファンが監督脚本。

警察学校での訓練や授業は序盤でテンポ良く終わらせ、大規模な女性誘拐事件をコンビが追いかける本筋がはじまる。

学校の授業が予想外に効果をあげたり、まだ警察ではないコンビだけが誘拐を追いかけるタイムリミットを作りだしたり、サスペンスとしての構成はオーソドックスによくできている。敵を追いかける描写でも、細かい伏線が効果をあげている。

中華街*1の不気味さや、弱い立場の女性を搾取する組織の恐怖、はげしい暴力と乱闘のカタルシスなど、韓国映画に期待される娯楽要素は完璧にそなえているといっていい。

被害者の女性がつとめているのが、「日本式」の耳かき店という設定も興味深かった。

 

ただし、中華街への恐怖を煽って警察権力を賞賛する物語が、韓国では強く批判されたという。

www.cyzowoman.com

www.cinemart.co.jp

もともと韓国映画は反社会組織を中国朝鮮族が構成する描写が多い。アラブ人を即座にテロリズムとむすびつけるハリウッド映画と似ているが、さらにバランスを欠いている。

韓国の犯罪映画において善良な中国朝鮮族は滅多に登場しない。日本の描写は植民地時代でさえ安易な全否定はしないことと対照的だ。

その問題が最も煮詰まった時期の作品ということは、映画を楽しみつつも記憶しておくと良いだろう。

gyao-youtube.hatenablog.com

*1:厳密には中国朝鮮族

初代ゴジラの前年、風化しつつあった広島原爆被害を継承するための力強い作品『ひろしま』(01:44:29)配信期間:2022年8月6日~9月5日

大手の映画制作会社ではなく、独立プロによって制作された1953年のモノクロ映画。おそらく初無料配信を約一ヶ月。

gyao.yahoo.co.jp

原爆投下にむかうB29乗組員のモノローグ。それは教室で流れる教育的なコンテンツだった。原爆投下から数年たち、復興のなかで被害者が白眼視されつつある時期。映画は原爆の惨禍を克明に描いていく……

 

アスペクト比は4対3のスタンダードサイズ。『ゴジラ』を代表とする東宝作品で活躍した伊福部昭が音楽を提供。助監督のひとりに、後に社会派映画で活躍した熊井啓がいる。特殊技術のひとりは、後の『ウルトラマン』シリーズにおいて怪獣着ぐるみ制作で活躍した高山良策

日本教職員組合、いわゆる日教組が制作したいかにも教育的な作品であるし、教師を生徒がしたう描写があるところは鼻白んだが、説教くさいというほどではない。教育することの難しさに向きあう自己批判的なつくりであることや、一方的に説明するだけの単調なつくりにしていないことが良いのだろう。

ふたたび日本が軍事化していく世相への批判的な視点もあり、一方的な被害者意識を主張するだけではない、世界に見せられる普遍的な物語になっているところも良かった。

 

前年に公開された新藤兼人監督の『原爆の子』と同じ原作を使用しているが、より原爆惨禍の再現を重視したという。

実際、延べ8万人を超えるエキストラが起用された群衆の痛々しさも、広大な廃墟セットも現在の視聴にたえる。ミニチュア特撮による廃墟の全景も、やや炎が大きすぎてスケール感をそこねているものの、時代を考慮すれば充分な完成度といっていい。

ただ大スケールのセットを漫然と映すのではないところも良かった。住宅街やコンクリート製ビルなどで廃墟の種類を変え、火災の延焼具合や群衆が川に逃げる場面の順序で被害の時系列を描写して、さらに群像劇的な被爆者の関係性も偶然と必然がありえる範囲で描いている。