巨大ロボット*1のVFXで注目されたロシア映画『オーガストウォーズ』の技術をうけついだ、2017年のロシア映画。無料配信を約一ヶ月。
隕石群により、巨大な球体宇宙船が姿をあらわす。ロシア空軍の攻撃で傷ついた宇宙船は都市に墜落し、隕石を観測していた人々が犠牲者となる。
異星人と接触したロシア軍は、相手が修理して飛び去ってくれるまで待つことにしたが、復讐しようと考える若者たちは隔離地域へ潜入する……
序盤の宇宙船墜落は派手でいて精緻なVFXが素晴らしい。一部の炎に違和感があるくらいで、土煙も建造物もリアルで細かく、スケール感がある。
物語の本筋は、そうして甚大な被害をもたらした異星人と、地球人がどのように向きあうかという普遍的なテーマが描かれる。
戦端を開いて犠牲を出した原因は自国の軍隊という皮肉。政府に隔離されて家に戻れず不満をためていく市民たち。復讐心を捨てようと訴える教師と、それに育てられた若者たち。戦闘準備しつつも交渉の成功を願って市民の暴動を優先的に止める軍隊……
廃墟となった都市の風景にリアリティがあるから、空想的なシチュエーションでも登場人物の悩みに実感をもてる。
ちなみに異星人は生物的なパワードスーツで敏捷に動き回るが、脱ぐと人間と変わりない姿をしている。
一応、地球人とルーツが同じ設定という説明はあるのだが、技術的に不死身なため人生観からまったく異なるはずの異星人が地球人の女性と恋愛関係になったりする。1951年の映画『地球の制止する日』や、2008年のリメイク作のようで、SFとしては古臭い。
しかし軍人の父をもつ女性との三角関係は、あまりにも古典的な展開にSF設定を足すことで、一周まわって楽しかった。異分子が入りこむことで騒動が起きる普遍的な家族のドラマになっている。そう思うと、女性と敵対していく地球人の恋人が、最終的に異星人の姿になるのもアイロニックだ。
最終的に平和を希求するテーマもまた古典的すぎるほど古典的なのだが、建前の大切さを力強くうったえていく展開と、それを詩的に表現する台詞には、王道の感動があった。
これが再び独裁色を強めている現代のロシア*2で作られたこと自体も興味深い。一応、軍隊の現場の自制心や判断力に好感をもてる作りにはなっているが、プロパガンダとは思わせないバランス。