2013年の米国クライム映画。ウルヴァリン役で知られるヒュー・ジャックマンが父親のひとりを、名脇役を演じてきたジェイク・ジレンホールが刑事を演じる。
ふたつの家族が仲良く楽しんでいた平和な住宅街で、それぞれの一人娘が同時に姿を消した。
怪しいキャンピングカーの男が逮捕されるが、精神年齢十歳で、とても誘拐できる知能はない。
しかし父親のひとりはキャンピングカーの男を拉致し、拷問して自白を引き出そうとする……
タイトルからは監獄を舞台とした映画かと思ったが、実際は心身が囚われたさまざまな人々を描いた群像劇といったところ。
『ボーダーライン』や『灼熱の魂』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、米国を舞台に重苦しい事件を描く。
そうしたGYAO!で好評だった作品群と同じく、社会派テーマを中心にすえつつ、あくまで謎解きサスペンスに徹して、斬新なアクションも適度に挿入。シンプルなどんでん返しで強烈な印象を残して物語を終える……
構造としては普通の刑事ドラマと同じだが、父親の拷問を念入りに描写して刑事と同時進行で物語を引っぱり、子供たちが救えるかどうか予想できない不穏感をもって緊張感ある展開がつづく。
神父宅の地下で見つかった謎めいた死体も、なかなか位置づけがはっきりせず、物語を迷路のように混乱させる……
正直にいえば地下の死体は「キャンピングカー」の「男の叔父」が「姿を消した年」から正体に見当がついたし、キャンピングカーの男の謎めいた発言も「犯人でこそない」が「元被害者児童」と推測して真相に近づくことができた。
また、追悼の場所にあらわれる第二の怪しい男は、「名探偵気取り」とも「模倣犯」とも「はっきり」しなくて、ただ「観客」を「混乱させる役割り」でしかない結末はどうかと思った。
しかし謎解きに2時間半を引っぱる力強さはあったし、動機は狂信的にすぎないとはいえ最後に伏線がぴたりとはまる爽快感もあった。
犯人を追いかけるのとは異なるシチュエーションのカーチェイスを大規模に展開したクライマックスも、ドラマとあわせて見ごたえある。
陰鬱で陰惨な事件を描きながら意外と後味が良く、家族の絆が人命を救ったと感じさせる結末を短い予感にとどめて余韻を残したのも印象深い。
刑事ドラマとして新しさと古さをかねそなえた、なかなかの佳作だと思う。