2008年の『イップ・マン 序章』の続編として作られた、2010年の中国映画。ドニー・イェンが主演し、『燃えよデブゴン』で知られるサモ・ハン・キンポーが脇を固める。
第二次世界大戦が終わり、舞台を香港に移して、一から武術指導をはじめるイップ・マン。現地の武術家と衝突しつつも、技術と人柄で存在を認めさせていく。
しかし租借地の香港を牛耳るイギリス人に中国人は格下に見られていて、中国武術も世界的ボクサーに嘲弄されたことで、イップ・マンはリングの上で戦うことに……
多数のアクションスターがさまざまなシチュエーションでバトルするカンフー映画として楽しいことは間違いない。
イップ・マンを仲間にむかえる現地武術家の試験はいかにも曲芸じみた楽しさで、ボクサーとの対決は虚構が現実に汚される痛々しさと迫真性がある。
しかし香港の民主化デモがもりあがったばかりの今、歴史的にも楽しめる作品でもあった。
返還前の香港映画で描かれていたように、イギリス支配下の香港は欧米の影響下で自由だったどころか、中国人は抑圧されていた。
その支配にあらがい、他者の尊厳に敬意をもつべきだという語るイップ・マンは、堂々とした綺麗ごとだからこそ美しい。
監督は、イップ・マンの台詞を中国人に向けたものとして描いたという。だからこそ普遍的なメッセージとして今も響くし、世界的な映画スターにイップ・マンの思想が継承された結末が胸にしみる。