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フォレスト・ガンプが隠していたアメリカの闇を照らす光『大統領の執事の涙』(02:12:09)配信期間:2019年11月28日~12月7日

歴代大統領につかえた黒人執事を描いた2012年の米国映画。字幕と吹替で約十日間の初無料配信。

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ホワイトハウスにいた黒人執事のひとりをモデルにして、その半生を通じて米国の現代史を描き出す。

よく似た手法の作品として『フォレスト・ガンプ/一期一会』が知られているが、そちらは知的障碍者の半生を米国史に重ねて感動を呼びおこしつつも、黒人の公民権ベトナム戦争の問題は軽視されており、白人に都合のいい米国史になっているという批判がある。

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ただひとつだけ出てくるのは、黒人の過激派のブラックパンサーの人たちが出てきて。それがものすごい悪い人たちとして描かれるんですよ。要するに、黒人差別を描かないで、黒人の運動の過激で悪い人だけを描くというやり方になっているんですよ。 

ベトナム戦争は悪かった」っていうことを全部消しちゃっているんですよ。『フォレスト・ガンプ』って。 

この『大統領の執事の涙』に登場する主人公も、知的にふるまうことはない。

いや知性をもつからこそ、差別の厳しい時代にホワイトハウスにつかえるため、政治的な発言をしないよう心がけているのだ。何を問われても嘘をつかない範囲で白人に気にいられる答えを返す。

そんな主人公に息子は反発し、平和な公民権運動から過激な反差別運動へと傾倒していく。ベトナム戦争が主人公の家族に影を落とす展開もある。完全に『フォレスト・ガンプ』の鏡像だ。

 

そして映画は歴代の大統領の長所短所をテンポ良く紹介しながら、米国が理想へ近づいていく流れを感動的に描いていく。

 主人公もまたホワイトハウスで白人と同じように働きながら出世できず、半分以下の給料しかもらえない黒人の立場に疑問を持っていく。

それが黒人を心地良くするためだけの安易な娯楽になりかねない危険性は、黒人俳優が白人好みの範囲でしか活躍できない問題などで自覚的に言及される。

権利獲得の方法論をめぐって黒人同士でも意見がわかれるし、それが主人公と息子の世代間対立としてあらわれる。

単純な白人賛美を批判するために、黒人内での葛藤を深く掘りさげていく。

 

たぶん低予算映画なのだろう。

再現映像は小規模なものばかりで、主人公が巻きこまれる暴動も街の一角くらい。戦争やデモなどの大規模な場面はニュース映像の引用ですまされる。

しかし大統領という米国の頭脳につかえつつ、あくまで小さな家族のために働きつづけた男の半生記として、必要十分なスケールがあった。