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日米が秘密裏に建造した原子力潜水艦が、乗組員によって謎の独自行動を始めるポリティカルアクション『沈黙の艦隊』(01:40:22)配信期間:2019年5月22日〜6月4日

『空母いぶき』が実写映画化されているかわぐちかいじが、初めてミリタリーを題材にして大ヒットした漫画。その忠実なアニメ化作品が初無料配信。

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サンライズ制作、高橋良輔監督、吉川惣司脚本というリアルロボットアニメ『装甲騎兵ボトムズ』のスタッフがタッグを組んだ作品。

 

もとは2時間枠のTVSPとして制作されたが、諸事情で先にソフト販売され、後に深夜枠で放映。

そのため長編ながら当時のテレビモニターにあわせて4:3のスタンダードサイズだが、劇場公開されてもおかしくないほど映像はしっかりしている。

キャラクターデザインをタツノコプロのベテラン加藤茂がつとめ、マッドハウスで活躍する箕輪豊や『銀河英雄伝説』の清水恵蔵が作画監督として参加。劇画調のキャラクターと地味で複雑なメカニックを手描きで破綻せずに動かしている。

アクションシーンも充実。反乱した原子力潜水艦は最新鋭だが強すぎず、基本的に奇策と度胸で米軍を上回っていく。軍事描写は必ずしもリアルではないが後出し設定は少なく、一貫性はあるので、そういう世界観と納得できる。

 

原作漫画は、連載開始時はソビエト連邦の崩壊直前で、連載途中に説明なくロシアに設定変更されたが、アニメ化においては最初から日米の対立構図を主軸にするよう改変。

まだ経済的に伸びる可能性を残しながら米国の傘下で葛藤していた日本の、今となっては珍しい反米ナショナリズムを背景として、物語が進んでいく。

反乱した部隊が乗るのは、国民どころかリベラルな日本首相にも秘密裏に建造した原子力潜水艦であり、米軍に隠れて核兵器を搭載した可能性もある。日米どちらもあつかいかねる難しさと、拿捕して米国側の兵器技術を知りたい日本側の思惑によって、原子力潜水艦が独立国家を宣言するという奇想が、綱渡りのように成立していく。

もともと原作者は政治的な作品より海の刑事物を描くつもりだったらしいが、原子力潜水艦を動かしている男の謎めいたふるまいは、たしかにリアルな政治劇というよりもミステリの味わいが強い。描かれる政治状況が古びていても、エンターテイメントとしては現在でも楽しめる。

 

ちなみに連載当時は描かれる国際社会こそがリアルで、それをデフォルメされた原子力潜水艦がかきみだす作品と思われていた。

しかし911同時多発テロ以降の少人数で世界をかきみだす軍事力を発揮する時代や、イスラム国の泡沫のごとき誕生と消滅などを思うと、原子力潜水艦が独立するアイデアにこそ先見の明があったのかもしれない。