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ただの殺人鬼ホラーと思わせて、手品のような展開に驚かされるミステリ映画『テラー・トレイン』(01:36:50)配信終了日:2018年12月25日

13日の金曜日』と同じ1980年に作られたスラッシャーホラー。後に007シリーズの『トゥモロー・ネバー・ダイ』などを監督したベテラン、ロジャー・スポティスウッドの監督デビュー作。

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医学用の死体で青年を驚かして精神を病ませてから3年。ニューイヤーのため列車を借り切ってパーティーを開いた学生たちが、走る密室の中で惨殺されていく。

早々に惨劇が始まることでテンポが良く、舞台が制限されているおかげで状況が理解しやすい。華やかなバカ騒ぎと流血の惨劇のコントラストもブラックな笑いと恐怖が生まれている。

学生たちの多くが仮装していることがポイントのひとつ。殺人犯がするりとまぎれこめて、殺人が始まっても冗談と誤解されてしまう。誰も気づかず殺戮がつづく前半から、殺人犯に追いつめられていく後半への変化で、ストーリーを単調に感じさせないところも見事だ。

 

そして単純な殺人鬼ホラーとしてもよくできているのに、まるでマジックのようなサプライズが結末に存在する。ディクスン・カー本格ミステリ小説のように。

それを象徴するように、世界的な手品師デビッド・カッパーフィールドが映画の参加。劇中でもカードが出現するテーブルマジックや人体浮遊などがパーティーの余興としておこなわれる。

 

真相は、精神を病んだ青年の単純な復讐かと思わせつつ、断片的な殺人鬼の描写と整合しないことがポイントのひとつ。情報は観客の目の前に堂々と提示されているのに、あまりにも大胆すぎて見すごしてしまう。

殺人鬼を「見た」被害者の「安心した態度」や、少し映る「女性のような手」から、「青年」ではないという可能性を観客に考えさせる。その一方で、「青年」の過去から「マジシャンになりかわって」殺人しているのだと登場人物は考えていく。その矛盾した手がかりが、ついに仮装をといて正体をあらわした「犯人」の、実は「マジシャンの女性助手」だという驚愕の情景をいやおうなく納得させる。

おそらく小説や漫画ならば読者はそれほど意外に感じないだろう。そのトリックを実写で実際に見せることができたこと自体が驚きなのだ。

そこでよく見ると、実写でトリックを成立させるためのテクニックが細部まで効いている。3年前のイジメの情景で「青年の半裸」をちゃんと見せて「女性助手」の「露出度の高い姿」との「ギャップ」を作りだしているのもすごい。実は犯人の「女装姿」は印象的でこそあれ、「消失マジック」のおかげで「短時間の出番」しかないし「あくまで助手」なので観客の注意がいかず、見破るだけの「時間的な余裕」がないのだ。