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ポツダム宣言受諾に対する戦争継続派によるクーデター『日本のいちばん長い日 THE EMPEROR IN AUGUST』(02:16:12)配信期間:2018年8月8日~9月7日

ノンフィクション作家の半藤一利氏の原作を再映画化。2015年に劇場公開された後、何度か無料配信されている。

gyao.yahoo.co.jp

東宝での岡本喜八監督による1967年版は、和平案を決める会議とそれを止めるクーデターの動きにしぼっている。昭和天皇の姿はほとんど描かれず、天皇制護持にこだわる重臣や軍部の狂騒をドライに描いた。

対する松竹での原田眞人監督による2015年版は、敗北を認めつつある昭和天皇の姿から始まり、終戦に向かって混迷する人間模様を描いていく。オムニバス調に各パートを分断して、パートごとのタイトルも表示。

 

ハリウッド映画を意識している原田監督らしく、英題やパートタイトル、さらにエンドクレジットまで英語表記をおこなっている。

たしかにアクションやVFXのクオリティは、日本映画としてはよくできている部類で、少なくとも見ていて冷めることはない。

しかし語り口調が海外を意識できているかというと、昭和天皇の御聖断神話を強化するつくりで、実態の理解には東宝版より難しいと思われる。

実際は昭和天皇自身もなかなか敗北を認められず、戦争を長引かせて犠牲を増やしていた。id:Vergil2010氏の記事を参照されたい。

vergil.hateblo.jp

国民の犠牲が出ても天皇を守ることを優先して敗北を認められなかったことを痛烈に描いた1967年版より、問題意識としては後退している。それどころかクーデターを起こす将校すら、一種の信念をもった若者たちとして描こうとしている。

 

ただ、登場人物の位置づけを明快にする娯楽作品にするなら改変も間違っていないし、場面転換が早いので中だるみはほとんどない。あくまで史実の一側面を抽出した娯楽作品と思って楽しむのが正解だろう。