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後に藤原竜也主演でリメイクされた韓国映画『殺人の告白』(01:59:49)配信期間:2017年10月10日~2017年10月23日

2013年に公開された、実話から着想したアクションサスペンス。日本で『22年目の告白-私が殺人犯です-』として2017年にリメイクされた。

gyao.yahoo.co.jp

女性をねらった連続殺人の時効となる17年後に、イ・ドゥソクという男が犯人として名乗り出る。注目をあびるなかで事件の詳細をしるした手記を出版し、ドゥソクの整った風貌とあいまって、ベストセラーとなった。

一方、事件を追いつづけて身近な者を失っていた刑事チェ・ヒョングは、17年前に最後に起きた失踪事件に注目していた。ドゥソクの告白と称する手記では、その失踪事件は連続殺人とは関係ないとされていたが……

 

題材となったのは、華城連続殺人事件と呼ばれる20世紀末の未解決事件。

同じ事件を題材とした、ポン・ジュノ監督による2003年の韓国映画殺人の追憶』は、日本の映画評論家から絶賛された。

殺人の追憶(字幕版)

殺人の追憶(字幕版)

 

『殺人の告白』は『殺人の追憶』を意識しているのか、雨が降りしきるなかで刑事が犯人を追うプロローグが似ている。手記を発表したドゥソクの風貌も、『殺人の追憶』の後半で浮かびあがる容疑者と同じく整っている。

しかし似ているのは、導入部分まで。未解決ゆえの重苦しいサスペンスとして完成された『殺人の追憶』に対して、『殺人の告白』は現実感よりも娯楽性を重視したアクションスリラーとなっている。

複数の遺族が犯人を拉致*1するカーチェイスで自動車をはいずり戦うという斬新な演出があったり、アクションでスローモーションを多用したり、凄惨な殺人事件を題材としながらも過剰なくらいの爽快感がある。

 

もちろん前半まで凄惨な表現をさけているのは意図的だろう。おそらくドゥソクのファンが発生する描写に説得力を与えるためだ。

地下鉄サリン事件後の上祐史浩や、逃亡手記が映画化された市橋達也を思うと、映画で描かれる韓国社会の熱狂は既視感と説得力がある。

そして事件の凄惨な印象をもたらす映像が明らかにされつつ、後半から新たな人物Jが登場。ドゥソクとJは真犯人の立場を争う。論争する両者の主張にはそれぞれ説得力があるし、同時に詐欺師の可能性も捨てきれない。

そしてドゥソクと対立しながらも救出してきたヒョングが、全てを明らかにする……

 

プロローグのさまざまな出来事が伏線として効果をあげ、ドゥソクの正体と動機の説得力は充分ある。最後の失踪事件が全てのポイントとなる謎解きもいい。

いささか題材の重さに比べてアクションの物量がありすぎる感もあったが、とにかく観客を楽しませようとする熱意ともども韓国映画の力を感じる作品ではあった。

*1:ここは復讐を題材にした韓国映画親切なクムジャさん』にも似ている。遺族のひとりが出所する場面で、罪をそそいで潔白になったという意味で豆腐をわたされる場面も同じだ。