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学生運動の破滅的実話にもとづく閉鎖環境サスペンス 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(03:10:12)配信期間:2017年7月29日~2017年8月11日

国際的な映画祭でも賞を受けた、若松孝二監督が遺した傑作。多くの各配信サイトでも有料会員は見放題。

gyao.yahoo.co.jp

GYAO!でのレビュー評価は低いが、どうやら映画への評価と映画の題材への評価を区別できないユーザーが多いようだ。

実際は3時間を超える映画ながら、閉鎖環境ホラーとして最後まで緊迫感がつづく。時代を再現したドラマでありながら、エンターテイメントとしても完成度が高い。

さほど予算は使っていないが、うまく映画らしい省略を活用して、大作映画に負けない映像を生みだしていた。

 

まず序盤は学生運動が壊滅していくまでを、資料映像と再現ドラマを組みあわせて見せていく。

映像はTVドラマのような安さだが、状況がくるくる変わり、登場人物も破天荒なキャラクターが多くて飽きさせない。

 

つづいて映画の中核をなす山岳ベースでの軍事訓練がはじまる。

過酷な自然環境で再現された小屋は完成度が高く、暴力による傷の特殊メイクも素晴らしい。あまり動きはなくディスカッションばかりつづくが、それが舞台劇のような独特の迫力を生みだしている。

しょせん若者たちの戦争ゴッコだが、だからこそ序盤のデモや学校占拠などと比べて達成感がなく、少人数なので何を目標や基準にすればいいのかわからなくなっていく。

そのため些細なミスで厳しく批判され、反省してもそれが不足だとして重ねて批判される。批判される状態から抜け出す方法がわからないため、歯止めがきかなくなって身内への暴力が始まっていく。

まるで最近も企業研修で自殺者を出した自己啓発セミナーのようだ。

ゼリア新薬の22歳男性「ある種異様な」新人研修受け自殺 両親が提訴

この映画でポイントとなるのは、自己批判をせまる指導者のふたりこそ、実は運動の初期に過ちをおかしていること。

赤軍派森恒夫は、敵前逃亡した時期に組織が壊滅して他の幹部がいなくなったからこそ、実質的なリーダーになった。革命左派の永田洋子は、訓練初期に水の確保に失敗して、映画で初めて自己批判した立場だった。

史実では他の要素も多いのだが*1、ともかくこの映画では後ろめたさをリーダーがかかえていたからこそ、ことさら他のメンバーに厳しくあたるという関係構図になっている。

しかも訓練も警察によって壊滅する寸前、森と永田は信じられない行動をとる。それは虐殺してきたメンバーに顔向けできないはずのことで、自己正当化の台詞も薄っぺらい。さらに森と永田は何の成果も出せないまま組織を崩壊させる。

ただの人間だからこそ、狂気と暴力に満ちた事件を引き起こしたのだ。

 

そしてついに、あさま山荘での籠城戦が始まる。

1時間に満たない描写だが、監督が自身の別荘を撮影場所に提供したことで、戦闘のリアリティはきわめて高い。実際に生活に使っていた壁や家具が壊されていく描写は必見。

籠城側の視点で描ききったこともうまい。多数の警官エキストラを使わずにすませられて、なおかつ情報も出口もない連合赤軍メンバーの焦燥感も表現される。

あさま山荘を経営していた妻を人質にとり、内輪ではそれを前提として対策をねりながら、妻の目の前では人質ではないと自己正当化をはかる愚かしさも正面から写し出される。

愚かな若者たちの破滅のドラマとして、見応えがあることは間違いない。

*1:たとえば森と永田が逮捕される時、とがらせたヤスリで警察の集団へ突入したそうだが、この映画では残りのメンバーが逮捕の報を聞くだけ。かたちだけでも抵抗した情報すら語られない。つまり森と永田が英雄視されたり、良くも悪くも原理主義者に見えかねない部分は、念入りに排除している。