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【再配信】暴力集団に育てられた少年が、怪物をてなずけていくスリラーアクション『ファイ 悪魔に育てられた少年』(02:05:20)配信期間:2020年11月24日~12月23日

2013年の韓国映画。運命の不思議から誘拐組織に育てられた子供が、組織のメンバーを父と慕い、犯罪技術を身につける。約一ヶ月無料。

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ひょんなことから犯罪者が日常の生活をはじめて、人間性をとりもどしていく物語は珍しくない。コメディタッチな作品が多いが、シリアスタッチな作品もある。

しかし、この映画の凶悪犯は数が多く、その犯罪は陰惨きわまりなく、とりもどす人間性も中途半端だ。そこから描かれるのは、犯罪を描いた韓国映画らしく、暑苦しく湿っぽく激しい物語。

 

誘拐した組織は、「白昼鬼」と呼ばれる男たち。そこで主人公の少年はファイと名づけられ、犯罪技術を教えこまれる。

ファイは優しい精神性が犯罪の遂行を邪魔して失敗。それでも白昼鬼はファイを見捨てず、立派な殺戮者として育てようとする。

そんな奇妙な家族愛が、はてしなく破滅に向かって転がり落ちていく。

 

アクションシーンは韓国映画の水準を見せつけるかのような完成度と充実ぶり。しかも伏線と応用がきいている。

冒頭の1998年の犯罪はサイコキラーまがいの凶悪ぶりで、後の家族愛との強烈な対比となる。そこで登場する人物が本筋の物語にも意外な再登場をしたりもする。

それから2013年に時代を移し、白昼鬼のひとりとファイの子供っぽいカーチェイスからコメディタッチに移行する……かと思わせて、地上げをめぐる殺戮劇が始まる。前半で描かれた白昼鬼の特技がそれだけでアクション映画として充分なのに、後半で発展したかたちで演出されて圧倒されるしかない。

そして主人公ファイは、白昼鬼を瓦解させていく縦筋だけでなく、地上げという横筋の犯罪にもかかわっている。登場人物に無駄がない。

 

ただひとつ文句をいうと、最後の最後に明かされる白昼鬼の来歴は、やや蛇足だったかもしれない。底知れなさが薄まったし、人間関係がせまくこじんまりとしてしまった。

とはいえ本筋が終わってからの物語もしっかりしていて、エンドロールの演出も素晴らしく、2時間超を飽きさせない充実した作品であったことは間違いない。

 

ちなみにVFXでクレジットされるのは、韓国トップクラスのCG制作会社4th Creative Party。アカデミー賞を受賞したポン・ジュノ監督作『オクジャ』で、怪物化した豚を担当。

おそらく今作では景色や戦闘のデジタル補正と、主人公が幻視する怪物を担当している。日常のVFXは気づかないほど自然であるし、怪物のCGはそのままモンスター映画に使えそうなほどよくできている。

 

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外国観光地で津波におそわれた一家の視点で描く、プリミティブなディザスターパニック『インポッシブル』(01:53:41)配信期間:2020年11月25日~

2004年のスマトラ沖地震の実話にもとづく、2012年のスペイン映画。初無料配信。

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イギリス人の夫婦は3人の幼い息子をつれて、明るいタイのリゾートにやってきた。

しかし海岸のコテージに滞在していた一家は、突然の津波におそわれ、はなればなれになってしまう。

母親は黒い濁流のなかで、かろうじて命をつなぐことができたが……

 

うつくしい風景が天災で一変する映像で、災害パニック映画としてシンプルに力強く完成した佳作。

津波が観光地が破壊する場面ではミニチュア特撮を使用。ミニチュアの大きさや高速度撮影が適切で、現代の映画VFXとして見ごたえある。

以降もスクリーン全体が濁流となる前半や、水が引いて荒野となった中盤、被災者が集められた病院の混乱ぶりまで、場面ごとの情景がスケール感たっぷりで、映像として飽きさせない。

はなればなれになった家族を主軸に、名も無き人々が支えあい少しずつつながっていく構成も、ドラマをシンプルにして無駄がない。本題と関係のないトラブルで場をもたせたりせず、津波というテーマがくっきり印象に残った。

 

J.A.バヨナ監督は、この後さらにVFX描写を充実させた心象ファンタジー怪物はささやく』を2017年に公開。

スペインの代表的な映画賞を総なめして、その年の国内最高興収を達成したという。下記の『CGworld』記事がくわしい。

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【再配信】夢破れた男と捨てられたガラクタの、大人の夢物語『ラブ&ピース』(01:57:33)配信期間:2020年11月20日~12月19日

園子温監督脚本によるオリジナル現代ファンタジー映画が、何度目かの無料配信。『シン・ゴジラ』の1年前に長谷川博己が主演した怪獣映画という側面からも楽しめる。

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ファンタジックな設定で、せちがらい社会を寓話化。

方向性は『世にも奇妙な物語』の拡大版といったところ。映画ではティム・バートン監督作品に近い。

 

ロックシンガーに挫折した主人公がTV番組に嘲笑される妄想を見ていたかと思えば、捨てられた玩具が謎の老人の力で意思をもって動いたりする。

ネガティブとポジティブが交錯し、主人公は奇跡的に成功の階段をかけのぼりながら、どこか大切なものを置きざりにしてしまう。

主人公が劇中でヒットを飛ばす歌は園監督が作詞作曲。あくまで奇跡の力の結果とはいえ、劇中歌としては悪くないクオリティ。かんちがいで深読みされそうな内容として成立している。

 

低予算映画らしいが、よく見ると少ないセットをうまく利用して、ちゃんと見られる映像にしあがっている。

地下空間の美術設定もこっているし、動く玩具たちも吊り糸こそ見えるが雰囲気にはあっている。ライブの観客も大勢いるように見せられていて安っぽくない。

何より、近年に『ウルトラマンX』等で活躍している田口清隆特技監督の仕事が素晴らしい。古典的なミニチュア特撮を現代的に発展させ、リアルな都市破壊を表現していた。10分ほどしかないが、クライマックスは怪獣映画としても必見だ。

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