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異星人が地球に来訪する古典的なSFを、現代ロシア映画の美しくも娯楽的な映像で描写『アトラクション-制圧-』(01:57:20)配信期間:2020年6月1日~6月30日

巨大ロボット*1VFXで注目されたロシア映画オーガストウォーズ』の技術をうけついだ、2017年のロシア映画。初無料配信を約一ヶ月。

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隕石群により、巨大な球体宇宙船が姿をあらわす。ロシア空軍の攻撃で傷ついた宇宙船は都市に墜落し、隕石を観測していた人々が犠牲者となる。

異星人と接触したロシア軍は、相手が修理して飛び去ってくれるまで待つことにしたが、復讐しようと考える若者たちは隔離地域へ潜入する……

 

序盤の宇宙船墜落は派手でいて精緻なVFXが素晴らしい。一部の炎に違和感があるくらいで、土煙も建造物もリアルで細かく、スケール感がある。

物語の本筋は、そうして甚大な被害をもたらした異星人と、地球人がどのように向きあうかという普遍的なテーマが描かれる。

戦端を開いて犠牲を出した原因は自国の軍隊という皮肉。政府に隔離されて家に戻れず不満をためていく市民たち。復讐心を捨てようと訴える教師と、それに育てられた若者たち。戦闘準備しつつも交渉の成功を願って市民の暴動を優先的に止める軍隊……

廃墟となった都市の風景にリアリティがあるから、空想的なシチュエーションでも登場人物の悩みに実感をもてる。

 

 

ちなみに異星人は生物的なパワードスーツで敏捷に動き回るが、脱ぐと人間と変わりない姿をしている。

一応、地球人とルーツが同じ設定という説明はあるのだが、技術的に不死身なため人生観からまったく異なるはずの異星人が地球人の女性と恋愛関係になったりする。1951年の映画『地球の制止する日』や、2008年のリメイク作のようで、SFとしては古臭い。

しかし軍人の父をもつ女性との三角関係は、あまりにも古典的な展開にSF設定を足すことで、一周まわって楽しかった。異分子が入りこむことで騒動が起きる普遍的な家族のドラマになっている。そう思うと、女性と敵対していく地球人の恋人が、最終的に異星人の姿になるのもアイロニックだ。

 

最終的に平和を希求するテーマもまた古典的すぎるほど古典的なのだが、建前の大切さを力強くうったえていく展開と、それを詩的に表現する台詞には、王道の感動があった。

これが再び独裁色を強めている現代のロシア*2で作られたこと自体も興味深い。一応、軍隊の現場の自制心や判断力に好感をもてる作りにはなっているが、プロパガンダとは思わせないバランス。

*1:実際は少年の空想で、本編は戦争映画。

*2:国際的な動きを見せる場面で、プーチン首相やメルケル首相やトランプ大統領の資料映像が使われている。アジアから登場するのが中国で、日本の安倍首相ではないあたりが国際的な存在感の低下を実感してしまった。

世界をまたにかけるコメディチックなスパイアクション大作『ザ・スパイ シークレット・ライズ』(02:01:13)配信期間:2020年6月15日~6月24日

2013年の韓国映画。主人公の技能と作品コンセプトを示すアフリカを皮切りに、タイや朝鮮半島へ移動しながらアクションがくりひろげられる。

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凄腕エージェントのチョルスだが、日常では夫の職業を知らない妻ヨンヒの尻にしかれていた。

朝鮮半島の融和を目指す北側の重要人物が謀殺され、タイにいる娘をねらって各国のスパイが動きだす。

もちろんチョルスも仲間とタイへ向かうが、ヨンヒが謎の美男子と浮気しているのを目撃する……

 

制作のトラブルから、助監督経験しかないイ・スンジュンが監督として抜擢されたという。

しかし大作スパイ映画らしいスケールをたもちつつ、そつなくまとめていて、韓国映画界の基盤の強固さを感じさせる。

予算を笑いに使い捨てるような実写映画は、日本なら『あぶない刑事』のようなバブル経済やその遺産が残っていた時期までしか制作できなかったろう。

 

主人公が男性自身の小ささで落ちこむのに対して、妻はロマンティックな体験という記憶を美化しつづけるコントラストが強烈。

けっこう人は死ぬし、銃撃戦や爆破やカーチェイスは現代の韓国映画らしい迫力だが、ほとんど血は流れず肉体も傷つかないので、気軽に見ていられる。3DCGと思われる飛行機やヘリに質感はないが、作品の雰囲気にあっているし、迫力優先の描写が楽しい。

複数勢力がいりみだれて戦うが、うまく整理していて理解しやすく、笑いの邪魔にならないのも良い。主人公の活躍が妻に足を引っぱられつづける偶然の連続も、敵の策略なのでご都合主義とは感じない。

事件の黒幕設定も、主人公の先輩が株取引で失敗していることが伏線的に作用して、資本主義テーマという納得感がある。

 

黒幕の裏に陰謀があったという展開はさすがにしつこさを感じたが、状況が動きつづけてアクション描写もバラエティがあり、ライトなエンタメとしては必要充分。ひまつぶしには最適な作品だと思う。

津波で水没したスーパーマーケットを舞台にした、サメ映画には珍しい傑作『パニック・マーケット』(01:33:01)配信期間:2020年5月23日~6月22日

2013年のオーストラリアとシンガポールの合作映画。サメに食われた死体などが何度もはっきり映るので、R15で要ログイン。

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海水浴場でホオジロザメに知人が食べられてから1年。男はスーパーマーケットで働いていた。そこにシンガポールから帰ってきた女が、たまたま現地の恋人とともに客としておとずれた。

そして万引き少女が父親の警官にひきわたされたり、強盗をたくらむ二人組がおとずれたり、スーパーマーケットらしいトラブルが発生するなかで、津波が発生する……

 

もとは3D映画として作られた、サメ映画には珍しく予算をつかった映画。

半地下のスーパーマーケット売り場と、地下駐車場の大きなセットを用意。さらに津波でそれらを水没させ、状況変化に富んだ決死のサバイバルを描き出した。

 反水没したセットはよく作りこんでいるし、それゆえ小道具を集めてサバイバルする展開に説得力がある。サメのプロップも良い出来だ。VFXも後述の質感に目をつぶれば、かなり力が入っている。

ただ本来は3D映画であるため、奥から手前に破片や動物が飛ぶシチュエーションが多すぎたり、立体感を優先してCGに質感が欠けている欠点はある。これは3D映画を2Dで視聴する時の特徴なので、残念ながら納得するしかない。

 

意外とシナリオもきちんとしている。

津波によって客の大半が死に、登場人物が整理されて物語がわかりやすく、大作なのに大味ではない。大勢が棚の上に逃げた売り場と、自動車に閉じこめられた暗い駐車場とで、危機の大きさやドラマの重さなどを変化させ、飽きさせない。

 やや特殊なトラブルが偶然に重なりすぎというシナリオの都合は気になるが、個性たっぷりな登場人物を設定して、誰が何をしたいのかという区別をつけやすい良さはある。何より間断なく事件が発生して、娯楽サスペンスとして緊張感がたもつのが素晴らしい。

登場人物はそれなりに知恵をはたらかせて奮闘する。B級サバイバル映画にありがちな愚行で無駄に犠牲者が増えていくだけの単調な展開ではない。ちょっとしたどんでん返しにも感心させられた。