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フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

犯罪専門のフリーカメラマンは、限りなく犯罪者に近い『ナイトクローラー』(01:57:36)配信期間:2019年10月19日~10月28日

2014年の米国映画。『キングコング: 髑髏島の巨神』などで知られる脚本家ダン・ギルロイの監督デビュー作。

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コソ泥のルイス・ブルームは、仕事を探して自分を売りこむが、まともな経歴もなく、どこでも断られる。

しかし、ある夜の高速道路で交通事故を撮影するフリーカメラマンと出会い、触発される。

すぐにブルームはカメラをたずさえ、持ち前の強引さで凄惨な現場へ踏みこんでいく……

 

これはTV報道などのメディアが見世物でしかないと風刺した、一種のピカレスクロマンだ。

上昇志向の若者が、視聴率をほしがる女性ディレクターと共犯的に、刺激的かつ露悪的な撮影をつづけていく。主人公は自動車で深夜の街を飛ばし、ライバルと競争しながら現場を踏みにじる。

いい情景を撮るために現場を改竄して、不法侵入もためらわない。さらに事件を呼びおこすような策略にまで手を染める。

 

しかし、どこまでも外道で非道なことをおこなう主人公だが、いざ失敗しそうになれば観客は手に汗を握ってしまう。倫理的には主人公が失敗するべきだと理解しつつ、感情的には共感させられてしまう。

さらに主人公の撮った映像が地味な話題よりも確かに刺激的ではあることや、存在しない事件を捏造まではしないという一線を守ることで、ジャーナリズムの問題を誇張はしても歪曲はしていないと実感させる。

 銃撃戦やカーチェイスといったアクションも、報道番組くらいのリアリティを確保しながら激しく描写。少し変わった視点のクライムサスペンスとして完成度が高い。

反乱した原子力潜水艦をめぐって世界が激動するアクションアニメ『沈黙の艦隊/沈黙の艦隊 VOYAGE2/沈黙の艦隊 VOYAGE3』(01:40:22/00:56:46/00:57:54)配信期間:2019年10月7日~10月13日

1998年から連載されて社会現象ともなったかわぐちかいじの漫画を、忠実に映像化。2度目*1の無料配信は3作一挙。

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原作は連載途中で冷戦が終わり、旧ソ連の存在感を後退させながら日米の対峙で1996年に完結した。

アニメは冷戦が終わった後に作られ、2作目と3作目は連載完結後の1997年と1998年に発売。しかし原作からうまくエピソードごとの対立構図を抽出し、きちんと起承転結をまとめた。

日本人が乗りこんで反乱した潜水艦が独立宣言をするまでの1作目。政治的に難しい立場の潜水艦を平和主義者な日本首相が見事にたらいまわしして問題を回避するまでの2作目。北極海の深部で最新の原子力潜水艦が知恵比べして戦う3作目……

残念ながら完結までアニメ化されることはなかったが、それぞれひとつのポリティカルアクションとして楽しめるだけのボリュームは充分ある。

 

アニメーションの制作は『機動戦士ガンダム』のサンライズだが、メインスタッフはより泥臭いロボットアニメシリーズ『装甲騎兵ボトムズ』の関係者が多い。おかげで、アニメらしい華やかさがありつつ、適度に渋味のあるアニメになっている。

ちなみに2作目と3作目はキャラクターデザインが『機動戦士ガンダムSEED』の平井久司に交代。現在は華やかな女性向けの絵柄で知られるアニメーターだが、癖のある劇画調の原作をていねいにアニメナイズしており、その実力を確かめることができる。

双子の少年と包帯で顔を隠した母親をめぐる、恐怖の正体『グッドナイト・マミー』(01:39:52)配信期間:2019年10月6日~10月19日

『パラダイス』三部作の脚本で一部に知られるヴェロニカ・フランツと、若手らしいゼヴリン・フィアラが、共同で監督と脚本をつとめた2014年のオーストリア映画

その恐ろしさで一部に知られていた作品が、約2週間にわたって無料配信*1

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美しい自然のなかの一軒家で遊ぶ、双子の少年。手術を受けて包帯で顔を隠した母に不審をいだき、少しずつ試しはじめる……そんな少年視点のスリラー映画といわれてきた。

 

実際に見ると、特色は美しい自然の風景と、台詞をほとんど使わない日常描写にある。危なっかしい遊びをする少年を描いて、少しずつ不穏な気配をただよわせながら、物語は決定的な破滅へ近づいていく。

伏線はいろいろ入っているが、台詞が少ないだけに説明も少なく*2、少年に感情移入させる描写も少ない。それが真相のサプライズを弱めているのだが、けして悪くはない。

スリラー映画ファンなら真相に見当をつけることは、前例が多いパターンなので、難しくないだろう。むしろ観客が早々に真相を推測することで、真実の母を求めて暴走していく少年に恐れと悲しみをいだく映画と感じられた。

*1:今回の記事は、初配信された時の再掲。少年と母親をめぐる、恐怖の正体『グッドナイト・マミー』(01:39:52)配信期間:2018年9月24日~10月23日 - フリームービーメモ@はてな

*2:謎解き的なゲームをとおして母親への不信感を強めつつ、母親の設定を自然に説明する場面はよくできている。