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フリームービーメモ。GYAO!、YOUTUBE、バンダイチャンネル、ニコニコ動画、等々で公式に無料配信されているアニメや映画の情報や感想

近現代の伝説的な中国武術家の、暴力に対する穏やかで強き抵抗『イップ・マン 序章』(01:46:26)配信期間:2018年9月12日~10月11日

第二次世界大戦前後を描く2008年の中国映画。香港からハリウッドまで幅広く活動していたドニーイェンが、アクションにとどまらない演技の確かさを証明した。

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邦題で「序章」とついているとおりシリーズ第1作だが、この映画だけで物語はきちんと完結している。

日本による中国支配の激動を、あくまで片隅で体験した武術家個人の視点で描くことで、内容に無駄がないし、描写の不足を感じさせない。

イップ・マンは暴力を好まないし、支配に対してもギリギリまで受け流そうとする。端々で強さを見せつけるが、耐えることを選ぼうとする。だからこそ、決意をもってたちあがるクライマックスがカタルシスにあふれるのだ。

 

日本人を安易に悪魔化しないことも見事だ。

きちんと俳優をそろえていて、日本兵の日本語がちゃんとしているから、ちゃんと人格をもったキャラクターと感じられるし、翻訳を利用したゴマカシに説得力がある。

ラスボスの三浦という将校は池内博之が演じて、武術を好む支配者なりの風格と、それなりの信念を見せる。他の暴力的な日本兵も、横暴な支配者なりの理屈を主張する。悪事のために悪事をはたらくような陳腐なキャラクターは登場しない。

逆に中国側にも貧しさを背景として同じ中国人から奪う犯罪組織がいて、ただ中国人というだけで善良なようには描かない。葛藤しながら日本軍に協力する中国人もいて、その温度差が群像劇をつくりだす。

 

ドラマのシリアスさを支えるように、画面が落ち着いているのも特徴だ。色彩からしてくすんでいて、上品な印象がある。

中国らしく巨大なオープンセットで街を表現するが、あくまで街にとけこんで生きる武術家のドラマなので、特に壮大な風景を見せたりしない。必要最小限の舞台にとどめているので、大味にならない。

酒をたのしむ女性のショートアニメが未放映エピソードもふくめて一挙配信『お酒は夫婦になってから』(全14話)配信終了日:2018年10月8日

第13話まではリアルタイムで各話無料配信されていたが、全話収録の映像ソフトにのみ追加された第14話も無料配信。

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キリっとしたキャリアウーマンが宅飲みで愛する人の前でだけ気が抜けるギャップを描く、良くも悪くもゆるっとしたアニメ。

今日中で無料配信は終わるが、1話3分ずつなので未放映エピソードもふくめて視聴できるだろう。

カルト化した新興宗教の恐怖をドキュメンタリータッチでリアルに描く『サクラメント 死の楽園』(01:39:06)配信終了日:2018年10月28日

人民寺院事件をモデルにした2014年の米国映画が初無料配信。

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フェイクドキュメンタリーオムニバス映画『V/H/S』シリーズの1エピソードを手がけたタイ・ウェスト監督が、製作総指揮と脚本を兼任。

森の奥で平和に暮らしている小さな宗教団体が、ささいな行き違いと狂信によって破滅に転がりこんでいくまでを、教団取材者の視点で描く。

 

いわゆるフェイクドキュメンタリーと呼ばれるジャンルの作品であり、登場人物が撮影した映像のみが使われ、独特のリアリティと迫真性がある。取材者が教団へ疑問を素直にぶつけることで、カルト教団の主張を一方的に聞かなければならないようなストレスもない。

少なくないフェイクドキュメンタリーが制作リソースの不足をごまかす手段として選ばれているが、この作品はしっかりと教団の住居群をオープンセットで設置し、事件が始まってからは危機につぐ危機で飽きさせない。

前半の不安をただよわすだけの取材はやや中だるみしているが、オカルトに傾倒しないカルト教団ホラー映画という珍しさもあり、一見の価値はある。