5月に無料配信された『ベルリンファイル』の、リュ・スンワン監督が2015年に制作したポリスアクション。今回も初無料配信。
盗難車両のロシア密輸事件で活躍したベテラン刑事が、芸能関係で出会った若き財閥御曹司。ふたりは緊張感をもちつつ、ある種の敬意をもって距離をとる。
しかしベテラン刑事の捜査協力者であり、財閥の下請けだった男の自殺未遂から、社会を支配する財閥問題にメスが入ることとなる……
社会派なテーマをとりいれ、現代韓国映画らしいアクションが満載だが、けっこう内容はコメディチック。
敵も味方もバカばっかりが状況を動かして、利口な人間が後始末に苦労する。警察組織を利用した圧力も、仲間たちとの協力も、もっとシリアスに描けそうなところを、あえて知能指数を下げたライトタッチで見せていく。
それが映画としてのヌルさにならず、かっこわるくも前向きに生きていこうとする人々への賛歌となっていた。財閥は残忍に目下をしいたげるし、淡々と人の命を奪おうとするが、庶民はぎりぎりのところで抵抗をつづける。その泥臭さが生き生きとした魅力を感じさせる。
しかもキャラクターはバカばっかだからこそ、それを動かすシナリオはていねい。
主人公のキャラクターを説明する冒頭の事件はしっかり本編の前哨戦となっているし、監視カメラで証拠が残されることを登場人物が意識しつづけることで時代性も生まれている。
韓国映画らしからぬ後味の良さもあって、気楽なエンターテイメントとしてよくできている。